先日、ヒザの痛みを訴える60代の女性が来院された。整形外科での診断では、変形性膝関節症だから手術が必要だといわれたそうだ。しかし、ヒザ痛の発症時に、打撲などといった外的な要因がなければ、その原因はほぼ腰椎のズレなのである。そのため、腰椎のズレさえ戻せば、ヒザの痛みも解消する。こんなことは、神経のしくみを理解していれば、ごく当たり前の発想である。ところが整形外科では、全く違った常識が支配している。変...

おかげさまで当メールマガジンは、先月、創刊14周年を迎えることができた。そこで、既刊の367回分すべてに目を通してみたら、内容が重複している部分も見られた。私としては、その都度新鮮な気持ちで書いているので、整合性はとれているつもりだ。重複しているのは、その話が何度強調しても、し足りないからでもある。 繰り返し取り上げている話題の一つに、近藤誠氏の「がんもどき理論」がある。これからの時代、がんと全く...

 モルフォセラピーでは、定期的に指導者たちが集まって、症例を発表する会がある。そこでは毎回、重大疾患や難病に対する施術の、効果実績が報告される。そのなかで先日、「おや?」と思う発表があった。 小学6年生にもなるのに、いまだにおねしょが続いて困っている子供が、親御さんに連れられてきた。そこで施術者は、その子のズレている骨を矯正した。するとその夜から、おねしょがピタッと止まったという話だった。 同様の...

 先日、近くのショッピングセンターに行ってきた。歩き疲れてベンチに座ったら、ベンチの前でディズニーの『シンデレラ』を上映していた。ディズニーの『シンデレラ』は有名だが、実際に見るのは初めてだったので、しばらく眺めていた。それにしても、おとぎ話というのは、なぜか子どもには聞かせられないような内容のものが多い。『シンデレラ』も、白人の美女が、その美しさだけで王子様に選ばれて結婚するという、典型的な優生...

夢とは不思議なもので、日ごろ考えてもいないようなことが、突然現れる。つい先日も、「がんはなぜ硬いのか」と真剣に考えている夢を見た。がんはゴツゴツとして岩のように硬いことから、昔はがんに「岩」という字を当てていたそうだ。 たとえ夢でも、「がんはなぜ硬いのか」というのは、かなりおもしろいテーマである。そんなことは今まで一度も考えたことがなかったのに、夢のなかでは、ちゃんと解答まで用意していた。それは、...

一昔前までは、がんといえば不治の病であり、死を意味する病名であった。ところが今では、がんは早期発見・早期治療をすれば治る病気になった、とまでいわれている。さらに、がんの種類によっては、5年生存率が8割から9割にもなるという。そういった数字からは、がん治療の飛躍的な進歩が感じられる一方、相変わらず、がんは日本人の死因の第1位であり、がんによる死亡者数も、決して減ってはいないのである。このギャップに対...

このところずっと、がんの転移の謎について考え続けていた。そして、この年末になって、やっと大まかな道筋が見えてきたのである。そこで今回は、この発見についてお伝えしようと思う。 がんという病気の最大の問題は転移である。がんが転移するかしないかは、患者の生存率に大きく影響する。通常、末期といわれる転移のあるがんの場合、指標とされる5年生存率が、極端に低くなるのだ。しかし、がんの5年生存率は、転移の有無に...

 先月、めまいの専門医である二木隆先生から、近著の『 臨床最前線で診るめまい 』(医学と看護社)という専門書をいただいた。二木先生は、体調のせいもあって、最近は臨床からは少し離れておられるのだが、その間に、今までの研究の集大成として、この本をまとめ上げられたようだ。 本書には、めまいに関する既存の書籍と違って、たいへん興味深い論文が数多く盛り込まれていた。特に、頚部痛とめまいとの関わりについて、深...

先月、武蔵野美術大学の関野吉晴教授に招聘されて、大学で講演をさせていただいた。関野先生については、テレビ番組の「グレートジャーニー」シリーズで、ご存じの方もおられるだろう。彼は探検家であり、医師でもあり、またモルフォセラピーのよき理解者でもあるのだ。 この講演は、彼の研究室が主催する「地球永住計画(※)」の連続講座の一貫として行われたもので、私には「美術と医学」というテーマが与えられていた。講演の...

学生の頃、体育の先生に水泳の特訓をしてもらったことがある。水泳の特訓といっても、速く泳ぐためではない。いざというとき溺れないために、いかにゆっくりと泳ぐかが目的だ。そして、ゆっくりと泳ぐための一番のポイントは、まず息を吐くことだった。 水泳の初心者は、呼吸が苦しくなると、やたらと息を吸おうとする。しかし、息を吸おうとすると、ますます苦しくなって、肩に力が入る。すると、体が沈んでしまう。これが、溺れ...

あるとき私は、骨のズレには2つの種類があることに気がついた。1つは、腰痛に代表されるような痛みを出すタイプのズレ、もう1つは、がん患者の体に見られるような、痛みを出さないズレである。要するに、ズレには、発痛と鎮痛という相反する性質をもつ、2つのタイプがあるのだ。 前回の当誌では、骨のズレは、筋肉がひきつった状態だと説明した。解剖学者の三木成夫(1925-1987)はその著書のなかで、「およそ筋肉と...

■ボツ原稿 先日、引き出しを片づけていたら、数年前にボツにした、メールマガジンの原稿が出てきた。当誌は私の研究発表の場でもあるから、日頃から考えていることをまとめる機会でもある。そのため、書き始めてみたら、まとまりのつかないものから、時期尚早のものまであって、発表できる内容になるまでには、何倍もの原稿を、ほごにしているのだ。 今回見つけたボツ原稿は、「アシンメトリ現象」の解消につながる、究極の「リ...

この春、ある方の紹介で、「私の哲学」という小冊子のインタビューを受けた。その記事がネット上に掲載されたことを、先月号でお知らせしたので、すでに読んだ方もおられるだろうか。サントリーの社長やプロスキーヤーの三浦雄一郎氏など、錚々たるメンバーに並んでなぜ私が? と思わないでもなかったが、モルフォセラピーの存在を知ってもらうチャンスだから、インタビューをお受けした。そのインタビューのなかで、20年近く前...

 おかげさまで当メールマガジンは、今回の配信で14年目に突入した。私は今まで、「腰痛とがんは家庭で治す病気にする」を目標にしてきた。腰痛に関してはすでに達成しているが、最終目標であるがんについては、まだ到達できていなかった。 ところが先日、モルフォセラピーの指導者の一人から、最終目標の達成を予感させる報告を受けた。彼は、全身転移の末期の肺がん患者を、モルフォセラピーの施術によって、生還させたという...

 先日、ある70代の女性Aさんは、私の顔を見るなり、「先生、聞いてよ!」とクラス会でのできごとを話し始めた。参加者10人程での食事を終えると、Aさん以外の全員が、バッグの中から薬やサプリメントを取り出して飲み始めたそうだ。Aさんは、食後に飲むものなど何もないので、手持ち無沙汰にしていると、見かねた友人の一人が、「これを飲みなさい」とAさんにサプリメントを手渡した。Aさんが、「そういうものは飲まない...

 以前の当メールマガジンは、「です・ます」調で書いていた。それを途中から「である」調に替えてみたのだが、どなたかお気づきだっただろうか。途中で替えたのは、科学の話なら「である」調が主流だと思ったからだ。また、「です・ます」調だと、読み手からは自信なさげに受け取られる、と知り合いの作家から指摘されたことも、理由の一つだった。 確かに、文体は断定的なほうが、頼もしく感じられるだろう。医療に関しての文章...

 最近、知ったことだが、当メールマガジンはずっと1000人以上の方に読んでいただいているらしい。私はてっきり、もう数百人ぐらいになっていると思っていた。まことにありがたいことだが、この13年のうちに、かなり新しい読者と入れ替わっている気もするので、今回は改めて、概論的な話をしておきたい。 そもそも私は美大を卒業し、美術を専門として生きてきた人間である。少し恥ずかしい言い方をするなら、アーティストな...

 日頃、あまり医療に縁のない人にとって、医学の世界というのは、いまだに象牙の塔と呼ばれていた頃のような、古めかしいイメージのようだ。そのため、いざ自分や家族が重大疾患になると、いきなり盲信型の権威主義に陥る傾向がある。その結果、皆、同じように、後味の悪い結末を迎えることになってしまう。 当院に来られているAさんから聞いた話である。この方の親戚で、まだ30歳になるかならないかのB子さん(仮名)に、病...

 電車のドアが開くと、皆、空いている席を目掛けて駆け込んでいく。その波に乗り遅れると、わずかにシルバーシートだけが残される。以前なら座ることもなかったが、近頃は、周りを見渡して自分よりも年長者がいないようなら、遠慮なく座ることにしている。私も今年で還暦である。それなりの容貌であるから、シルバーシートに座ったからといって、若いときのように、非難の視線を浴びることもなくなった。おかげで楽ができるという...

 最近、なかなか妊娠できないので、病院で不妊治療を受けている方が多いようだ。治療のおかげで子どもを授かる方もいれば、何回治療を受けてもダメだったという方もいる。不妊治療というのは、かなりの費用と時間を要するだけでなく、心身に激しい苦痛を伴うものであるらしいから、同情を禁じ得ない。 先日、モルフォセラピーを実践している施術者から、興味深い話を聞いた。以前から診ていた患者さんが、「おかげさまで妊娠でき...

 今春、医学誌のランセットに、2013年度の世界健康寿命が掲載された。健康寿命とは、日常生活で介護を必要としない、自立して生活できる期間のことである。結果を見ると、日本は188カ国中、男性が71.11歳、女性が75.56歳で世界1位となっていた。 ところが、日本人の平均寿命は男が80歳を超え、女性が86歳台であるから、介護を必要とする期間の平均は、男女ともにおよそ10年にもなる。また、平気寿命を超...

 寝苦しかった夏も過ぎ、ようやくぐっすり寝られる季節がやってきた。だが、せっかくの季節にもかかわらず、日々眠れずに苦しんでいる人がいる。いわゆる、不眠である。 不眠の原因は、大きくは2つに分けられるようだ。一つは、仕事が忙しいとか、赤ちゃんの授乳でとか、騒音のせいでなどの、病気には関係のないもの。もう一つは、どこか痛い、かゆい、咳が止まらない、下痢が続くなど、病気を原因とするものである。 ところが...

 前回の当誌では、日本人の死亡原因と、がんの死亡者数の統計を見る限り、がんの早期発見・早期治療は、全く功を奏していない、という事実をお伝えした。なかでも、肺がんは、罹患者数・死亡者数、ともに増え続けており、他のがんに比べて、死亡率が非常に高い厄介ながんである。そこで、今回は肺がんについて、さらに詳しく見てみたい。 先日も、ある新聞に、肺がんで妻を亡くしたという、がんセンターの医師の手記が載っていた...

この春、病気で入院していた人から聞いた話である。彼女の同室に、腎臓がんの手術後の痛みで苦しんでいる50代の女性がいた。その女性の話では、ここに入院する何ヶ月も前から、ずっと下痢が続いていたそうだ。だが、あちこちの病院で検査を受けてみても、下痢の原因がわからないでいた。それらの検査のうち一つで、たまたま腎臓にがんが発見された。そこで、医師に勧められるまま、この病院で手術を受けたのだという。 腎臓がん...

以前、知人から妙な話を聞いたことがある。「年をとると、だんだん頭蓋(とうがい)の縫合(ほうごう)がゆるんでくる。そのゆるんだ縫合を調整すると、顔のむくみが取れて小顔になる」という説があるというのだ。そのときは、単なる話のネタとして、二人で大笑いして終わった。それが最近では、この説が一般に浸透してきているようなので、少なからず驚いている。 頭蓋というのは、およそ22個の骨が、縫合と呼ばれるノコギリの...

医者にとって、もっともイヤな患者の話がある。ある医者の奥さんが、ちょっとした症状をダンナ(医者)に伝えた。すると、「これでも飲んでなさい」と薬を渡された。奥さんは、数日はその薬を飲んでいたが、一向に症状が治まる気配がない。そこで、「アナタッ、あの薬、ゼンゼン効かないじゃない!」とダンナに文句をいった。ダンナは、「あ〜そうか。それならこっちの薬でも飲んでみるか」と軽くあしらった。その態度に奥さんがぶ...

先日、友人が心臓の検査を受けたら、冠動脈が細くなっていると診断された。医師からは、カテーテル治療を提案されているという。 冠動脈とは、心臓の筋肉に酸素を送る、もっとも重要な血管である。その冠動脈で血流が遮断されれば、心筋梗塞となって命に関わることになる。そこで、狭くなった冠動脈に、ステントと呼ばれる金属製の管を挿入して、血管を広げるのがカテーテル治療である。 カテーテル治療が開発され、マスコミで発...

アメリカの厚生省と農務省が設置した「食事指針諮問委員会」が、この2月に、「コレステロールを過剰摂取しても血清中のコレステロール値は上がらない」と発表したことをご存じだろうか。これは、従来の医学常識を根底から覆す内容だが、その後、国内のマスコミが騒ぐ気配がない。 コレステロールを摂り過ぎると、血清中のコレステロール値が上がり、動脈内壁にコレステロールが沈着して動脈硬化の原因になるというのが、これまで...

何年かぶりの友人から「久しぶり〜、元気ィ?」という電話がかかってきた。私に「元気か」と聞く場合、大体は本人が元気でないことが多い。案の定、彼女も、ママさんバレーで膝を傷めて困っていた。2ヶ所の整形外科を受診して、両方で「即、手術だ」といわれたそうだ。 彼女はもともと体が丈夫なのが自慢で、その体格をいかして、ママさんバレーでは主力選手なのだ。そのため、手術で長期間に渡って試合を欠場することは、チーム...

だれもがその生涯で、大なり小なり何らかの体の痛みを経験する。人によっては、想像を絶する痛みを体験していることだろう。私にしても、過去にはさまざまな痛みに苦しんできた。その結果、痛みにはその度合いだけでなく、数多くの種類があることも身を持って確認した。 私の経験上、痛みの度合いで上位にくるのは、三叉神経痛(さんさしんけいつう)だと思う。三叉神経痛とは、顔面にある三叉神経という太い神経の先で起こる神経...

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