【ハナヤマ通信】349 多剤処方が介護崩壊を招く

 今春、医学誌のランセットに、2013年度の世界健康寿命が掲載された。

 

健康寿命とは、日常生活で介護を必要としない、自立して生活できる期間のことである。

 

結果を見ると、日本は188カ国中、男性が71.11歳、女性が75.56歳で世界1位となっていた。

 

 

 ところが、日本人の平均寿命は男が80歳を超え、女性が86歳台であるから、介護を必要とする期間の平均は、男女ともにおよそ10年にもなる。

 

また、平気寿命を超えたあたりから、介護度も上がり始め、特に重い要介護3〜5の割合が急激に増える。

 

さらに日本では、今後の高齢化に伴って、介護を必要とする人数や、期間、各人の介護度もますます上昇することが予測されているのだ。

 

 

 さて、そういった高齢化の大きな問題の一つに、認知症がある。

 

認知症は、主に加齢を原因とするため、高齢になればなるほど、その発症数も多くなる。

 

しかし、加齢はもちろんだろうが、薬もその原因になっていると私は考えている。

 

 

 日本の高齢者の多くが、常に何種類もの薬を服用していることはよく知られている。

 

5種類も薬を処方したら犯罪だといわれる国もあるなか、日本では、サプリメントや健康食品を含めると、10種類以上の薬を常用している人も、珍しくはない。

 

この多剤処方が、認知症を誘発している可能性は、十分に考えられるのである。

 

 

 だが、医学上は、薬と高齢者の認知症発症との関係について、あまり言及されることはない。

 

前回、睡眠導入剤として使用されている、ベンゾジアゼピンと認知症の関係についてお伝えしたが、ベンゾジアゼピンの長期服用は、高齢者の認知機能を低下させるのみならず、生命予後までも悪化させる。

 

そのため、極力、使用を控えるように推奨されている薬なのである。

 

イギリスのガイドラインでも、4週間以内の使用に留めることになっている。

 

ところが日本では、私の知る範囲だけでも、この薬を何年も処方され続けている患者さんは多い。

 

そうやって長年、ベンゾジアゼピンを使用していると、認知機能の低下だけでなく、薬の効果は薄れ、しかも離脱が難しくなるのだから、さらに厄介だ。

 

 

 また、薬と認知症の関係については、降圧剤やコレステロール降下剤でも、一部では問題になっていた。

 

一般的には、血圧の高い高齢者ほど、認知症の発症が多いといわれるが、一方では、逆に、降圧治療やスタチンによるコレステロール低下療法を行うことで、認知機能の低下を来たすことがあるらしい。

 

しかし、このあたりの矛盾については、医学的にも説明がはっきりできないようだ。

 

要は、脳への血流障害が、認知機能の低下に結びついているのだろうが、私は、この血流障害は、椎骨のズレが原因だと考えている。(詳細は拙著にて説明済み)

 

いずれにせよ、認知症の増加は、高齢化だけのせいではないはずなのである。

 

 

 実際のところ、睡眠導入剤、血圧降下剤、コレステロール降下剤などは、併用で長期にわたって処方されている薬である。

 

確かに、それらが将来的に認知症を増やすというエビデンスはないのだろう。

 

けれども、高齢者の薬を減らしたら寝たきりから復活した、などという話が決して珍しくないのと同様、高齢者の認知症も、薬がその発症を促進している側面は否めないと思う。

 

 

 ご存じの通り、現在の医療には、認知症に対する決定的な解決方法は存在しない。

 

解決法どころか、予防法すらわかっていないのが実情である。

 

それが、処方されている薬の問題であるならば、薬を減らすことで、発症を未然に防ぐことも可能なはずである。

 

 

 もちろん、認知症の増加は、医療だけの問題ではない。

 

介護を含めた社会福祉の大問題でもある。

 

日本では、医療と福祉は全く別のカテゴリーになっているが、仮に、薬と認知症との間に因果関係があるならば、医療が福祉の負担を増大させていることになる。

 

また、現在は、医療も介護も、かなりの部分を国の負担でまかなっているため、国家予算を圧迫している。

 

このまま高齢化が進めばどうなるか。

 

その参考になる例が、イギリスだ。

 

 

 第二次大戦後、イギリスは、「ゆりかごから墓場まで」をスローガンに掲げて、福祉国家を目指してきた。

 

しかし、当初の想定より高齢者の寿命が大幅に伸びたため、莫大な財政赤字を抱えるようになってしまった。

 

そこで登場した「鉄の女」サッチャー首相が、「小さな政府」への大転換を図り、医療費抑制政策を推進して、財政赤字の解消に立ち向かった。

 

だが、その結果、急激な医療崩壊を招いてしまった。

 

ところが、医療が崩壊したといわれたその時代ですら、イギリスの平均寿命は伸び続けていたのである。

 

この事実はたいへん興味深い。

 

 

 そして、そのイギリスを手本にして福祉国家を目指してきた日本も、現在では、途方もない巨額の財政赤字にあえいでいる。

 

イギリス同様、今こそ大きく舵を切る必要があることは、だれの目にも明らかだ。

 

幸い、イギリスの医療崩壊は平均寿命には影響がなかったが、これが介護崩壊となれば、話は別だ。

 

日本では、近い将来、高齢者の4人に1人は認知症患者だ、などという話を聞けば、これがとてつもない社会問題に発展することは、容易に予想できるだろう。

 

われわれは、人類史上だれも経験したことのない社会、かのガリバーが訪れたという、おぞましい不死の国の住民になろうとしているのかもしれない。

 

                             (花山水清)

 

 

 

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【3】今 月 の 雑 感
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 ●テンヤワンヤ

 

  10月はとにかく来客の多い月でした。数えてみると、父が8人兄弟、母
 が11人兄弟ですから、配偶者を含めると34人もおじ・おばがいるのです。
 もちろん、他界している人もいますが、その親戚たちが、いきなり我が家に
 やってくると、お客同士が偶然重なることもあって大変でした。(ハナヤマ)

 

 

 

  ★次回「ハナヤマ通信」は、12月2日(水)午前10時配信予定です★

 

 

 

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    ■記事提供/花山水清 ■編集・発行責任/有限会社花山水清
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