【ハナヤマ通信】351 平均寿命と健康寿命
電車のドアが開くと、皆、空いている席を目掛けて駆け込んでいく。
その波に乗り遅れると、わずかにシルバーシートだけが残される。
以前なら座ることもなかったが、近頃は、周りを見渡して自分よりも年長者がいないようなら、遠慮なく座ることにしている。
私も今年で還暦である。
それなりの容貌であるから、シルバーシートに座ったからといって、若いときのように、非難の視線を浴びることもなくなった。
おかげで楽ができるというわけだ。
なかには、明らかに高齢者然とした人が、空いているシルバーシートを避けて、一般席に座ろうとしているのを見かけることがある。
自分はまだそんな年ではない、と思っておられるのだろうか。
以前、ある若い女性が、高齢者と思しき男性に席を譲ったら、大声で怒鳴られ、罵声を浴びせられて、泣いていたことがある。
一方、ある60代の男性は、新年早々、若い女性に電車で席を譲られたのがショックで、春を過ぎても立ち直れないでいた。
まだまだ若い、などと思っている時点で、すでに老化しているともいえるが、見た目と本人の意思がそぐわないと、悲劇がおきることもあるようだ。
一昔前なら、50代、60代にもなれば、おじいちゃん、おばあちゃんと呼ばれてもおかしくなかった。
あの「サザエさん」の父親、磯野波平さんも、まだ54歳の設定だ。
ところが今では、日本人の平均寿命がかなり伸びた結果、80代ですら年寄り扱いするのがはばかられることも多い。
90代でも、しっかり一人暮らしを続けている人もいるぐらいだ。
現代は、年齢だけで高齢者を計ることができなくなっている。
そうすると、高齢者かどうかを判断するには、健康寿命が尽きたかどうか、つまり、他人の手を借りずに、自分一人で生活できるかどうかで分けるのが、適切かもしれない。
手元の資料では、日本人の平均寿命と健康寿命の差は、平成22年の時点で、男性9.13歳、女性12.68歳となっている。
この平均寿命と健康寿命の差というのは、介護を受ける年数を意味している。
そこで、厚生労働省では、この平均寿命と健康寿命の差を、いかに縮めるかが目標となっているのだ。
もちろん、だれしもが、健康寿命が尽きた時と寿命が一致すること、すなわち、元気なうちにポックリ死ぬことを望んでいるはずだ。
しかし、そのような例はまれである。
では、どうすれば健康寿命を伸ばすことができるのか。
残念ながら、健康寿命が世界一の日本であっても、そんな方法が確立しているわけではない。
多くの人がイメージするのは、結果はどうあれ、まめに病院で検査を繰り返すことぐらいだろう。
私は、健康寿命が損なわれる大きなポイントは、歩行機能の低下にあると考えている。
人間は、歩けなくなると、食事・排泄・入浴なども一人で行うのが難しくなってくる。
また、歩行機能の低下は、認知機能まで低下させるという。
実際、介護保険の認定調査でも、自力で立ち上がれるか、一人で歩けるか、といった歩行機能のレベルが、一番の判断基準となっているようだ。
高齢者の歩行機能低下の原因といえば、脳卒中や、転倒による大腿骨骨折などが、よく知られている。
しかし、本当は、腰やヒザが痛くて、歩けなくなっていることが多いのではないだろうか。
また、高齢者の腰痛やヒザ痛は、加齢によるものだから、治らないのが当た
り前だとも考えられている。
だが、私が今まで見てきた高齢者の場合、その腰痛やヒザ痛は、決して加齢が原因ではなかった。
若い人たちと同様、単に、腰椎や骨盤がズレているだけなのだ。
高齢者だろうと、そのズレを戻せば症状は消えてしまうのだから、いたって簡単なメカニズムである。
しかし、簡単なメカニズムではあっても、ズレを戻さずにそのまま症状が続けば、瞬く間に健康寿命が尽きてしまう。
それなのに、ズレが原因の歩行機能低下は、今の医療では、治療することも診断することも、ましてや予防することも不可能である。
もちろん、ヒアルロン酸やコンドロイチンや、登場しては消えていく健康食品の類を、いくら摂ってみてもムダなことだ。
とはいえ、骨のズレによる症状という認識が一般化しないことには、話は始まらないのである。
毎度のことながら、私としてもこの状況は大変もどかしい。
さて、ここで勘違いされては困るのだが、人間にとって、老化そのものは不可逆的な現象である。
人間の細胞は、1分1秒たりとも若返ることはない。
骨のズレを矯正して歩行機能が改善しても、単に、老化をわずかに先送りにしているにすぎない。
どんなに時間の流れに逆らってみても、やがて訪れる「死」という現実は変えられないのである。
しかし、今後、どんなに医学が発展して寿命が伸びようとも、われわれは、ただ長生きさえすればいいわけではないはずだ。
それでは、目的を見失っているのではないか。
今ある時間をいかに有効に生きるか、いかに意味のある生き方にするか。
このことこそが、いつの時代でも変わらないテーマだと思うのである。
(花山水清)
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ようにと子どもに伝えたそうです。仏壇や位牌というのは、処分しにくいか
ら、そういう苦労を子どもにかけないために、自分が持っていくというので
す。異論のある方もおられるでしょうが、英断だと思います。(ハナヤマ)
●2008年に実施した「ペルー古人骨調査」の報告書をPDFファイルにして、
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★次回「ハナヤマ通信」は、2月3日(水)午前10時配信予定です★
\(^o^)/ 今年もどうぞよろしくお願い致します \(^o^)/
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