【ハナヤマ通信】366 シンデレラのブラジャーとガラスのハイヒール
先日、近くのショッピングセンターに行ってきた。
歩き疲れてベンチに座ったら、ベンチの前でディズニーの『シンデレラ』を上映していた。
ディズニーの『シンデレラ』は有名だが、実際に見るのは初めてだったので、しばらく眺めていた。
それにしても、おとぎ話というのは、なぜか子どもには聞かせられないような内容のものが多い。
『シンデレラ』も、白人の美女が、その美しさだけで王子様に選ばれて結婚するという、典型的な優生思想で構成されている。
こんな展開でメデタシメデタシ、などという価値観を幼児期に植え付けられたら、その子の将来が心配だ。
それはさておき、私が気になったのは、シンデレラの健康のことである。
シンデレラは、ウエストを極端にしぼって胸を強調したドレスを着せられ、しかもガラスのハイヒールを履かされていた。
確かに、その姿は女性美の象徴のような美しさで、他を圧倒していた。
だが、その見た目の美しさと引き換えに、彼女には厳しい現実が待っているのだ。
しばらく前にも当誌で書いたことがあるが、ある皮膚科医から聞いた話では、近年、ブラジャーのバンドが当たる背中の部分に、メラノーマ(悪性黒色腫)が増えているという。
メラノーマといえば、発見されたときにはほぼ転移しているというぐらい、悪性度の高い皮膚がんである。
本来、日本人のような有色人種には少なく、白人に多いがんで、特に紫外線量の多い、オーストラリアに住む白人が、発症しやすいことで知られていた。
しかしそれも、UVカット商品などのおかげで、段々と減っているらしい。
一方、アメリカでは、逆にメラノーマが増えているという。
増えた理由は、検査による発見数が増えたからであって、発症数そのものが増えているわけではないようだ。
それではなぜ、日本女性にメラノーマが増えているのだろうか。
しかも、最も紫外線の当たらない下着の内側の部分に、発症しているのはなぜなのか。
医師は、ブラジャーで慢性的にこすられた刺激が、原因ではないかと説明していた。
しかし、こすられた刺激が原因ならば、鼠蹊部などは、色素沈着するほどこすられているのだし、電動歯ブラシの普及で、歯肉がんが増えたという話も聞かない。
だから、この説明では納得できない。
一昔前までは、ホクロががん化して、メラノーマになると考えられていた。
現在はこの説も否定されているが、ブラジャーのバンドの当たる部分に、大きなホクロができている女性は多い。
本人は気づいていなくても、これはかなりの確率なのだ。
私の知る限りでは、そういうホクロは、骨のズレによって刺激された神経支配の領域に、できていることが多い。
これは、骨のズレによる発がんのメカニズムと、同じなのである。
それなら、背中のメラノーマも、胸椎のズレによって発症していると考えられるのだ。
また、ブラジャーを着けていると、バンドの部分では胸椎のズレ幅が大きくなる。
そのことが、メラノーマの発症を、より助長しているはずだ。
前に、乳がんとブラジャーの関係について、当誌で取り上げたときは、女性読者からの反響が大きかった。
やはり、ブラジャーを着けることには、潜在的に不安を感じている女性が、多いのだろう。
ブラジャーは乳房をホールドして、外観を整えるための下着であるが、体幹を締め付ける作用が、極めて強い。
そのため、胸椎が大きくズレるだけでなく、体幹部の血流が阻害されたり、呼吸が小さくなったりといったデメリットも多い。
ところが、ある調査によると、日本女性の3分の1は、24時間ブラジャーを着けたままだそうだ。
ブラジャーの着用時間が長いと、乳がんの発症率が上がるという説もある。
他にも、ブラジャーと乳がんの関係については、さまざまな医学的研究がされてきた。
だが、いまだ決定的な結論には至っていないため、ブラジャーが危険視されることはない。
しかし、ブラジャーの着用が、胸椎のズレを増幅させている事実から見れば、ブラジャーの着用は、十分、乳がんの危険因子になり得る。
しかも、メラノーマや乳がんだけでなく、女性の肺がんの発症も、同じメカニズムが働いていると考えられるのだ。
以前から、肺がんが喫煙によって発症することは、ほぼ確定した事実だといわれてきた。
ところが、タバコを全く吸っていない、女性の肺がんも増えていた。
その矛盾を解消するため、女性の肺がんは、副流煙による受動喫煙が、原因だとする説が浮上した。
そうして、WHOの主導で、嫌煙権運動が世界中に広がっていった経緯は、ご存じの方も多いだろう。
その結果、めでたく男性の喫煙率は大幅に下がったのだが、なぜか女性の肺がんは、一向に減らなかった。
女性の直接喫煙率が、それほど上がっているわけでもない。
それなのに、相変わらず、肺がんの原因はタバコだということになっている。
受動喫煙原因説には、大した科学的根拠はなかったそうだから、肺がんの主たる原因が、タバコかどうかすら疑わしい。
そこで私は、女性の肺がんも、メラノーマや乳がん同様、胸椎のズレが重大な危険因子だと考えた。
そして、その発症を助長しているのが、ブラジャーの着用だと思うのだ。
さて、ここからは話が少し複雑になるが、乳がんの発症には、胸椎だけでなく、腰椎や骨盤のズレが関係している点も、説明しておきたい。
まず、乳がんの発症には、エストロゲンが腫瘍促進物質として関わっている。
エストロゲンは、卵巣から分泌される女性ホルモンである。
このエストロゲンの分泌を抑えると、乳がんの発症率が急落することも、疫学上、証明された事実であるから、エストロゲンの関与は疑いようがない。
また、現代の女性は、昔の世代よりも初潮が早く、妊娠回数も減ったため、月経期間が極端に長くなっている。
その分、エストロゲンの分泌期間が長くなり、乳がんのリスクが上がっているといわれる。
それなら、妊娠期間の末期は、エストロゲンの分泌量が最大になるのだから、妊娠回数の多かった世代のほうが、乳がんのリスクが高くなるはずではないか。
この矛盾に対して、妊娠期間中のエストロゲンは、その後の乳がんのリスクを下げる働きがある、という説もあるようだ。
話がかなり複雑に思えるが、要するに、エストロゲンの作用の仕組みは、まだ完全には解明されていないということである。
だが私は、エストロゲンについては、その分泌期間の長短よりも、骨のズレによる分泌異常のほうが、重大だと考えている。
たとえば、現代の日本では、多くの女性が月経の異常や、月経痛に苦しんでいる。
それらの症状は、腰椎や骨盤のズレが原因であることが多い。
特に、骨盤のズレは、卵巣に対して機械的なひねりの力を加える。
すると、エストロゲンの分泌異常が引き起こされ、月経が異常になるのだ。
そして、エストロゲンが過剰に分泌されれば、それは腫瘍促進物質として、乳がんの発症に寄与してしまうのである。
さらに、腰椎や骨盤のズレは、子宮がんや卵巣がんの発症にも関わっている。
その腰椎や骨盤のズレを助長しているのが、ハイヒールなどの窮屈な靴なのだ。
ほとんどの女性の足が、外反母趾になっていることから見ても、見た目の美しさを優先して、爪先を締め付けるような靴を履いている女性が、非常に多いことがわかる。
ハイヒールを履けば、重心が変わって、どうしても歩き方は不自然になる。
床面からの衝撃も、ダイレクトに全身に伝わりやすくなる。
それが、腰椎や骨盤のズレ幅を、大きくしてしまうのだ。
現代の女性は、家庭から社会へと開放され、自由になったといわれる。
しかし実際には、単なるファッションですら、社会から求められる基準に合わせようとして、健康を損なう女性が多い。
もともと、女性は女性であるがゆえに、女性特有のがんのリスクを負っている。
その上、体を締め付けることで、わざわざそのリスクを増幅させるべきではない。
『シンデレラ』のように、美しさだけが評価される大昔のおとぎ話など、真に受けてはいけないのだ。
そもそも、王子様と結婚できさえすれば幸せになれる、などという発想自体が情けない。
できることなら、見かけではなく、人間性そのものが幸せに結びつくような、その人なりのハッピーエンドを見つけてほしいと思う。
(花山 水清)
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