【ハナヤマ通信】364 がんの早期発見・早期治療は有効なのか

一昔前までは、がんといえば不治の病であり、死を意味する病名であった。

 

ところが今では、がんは早期発見・早期治療をすれば治る病気になった、とまでいわれている。

 

さらに、がんの種類によっては、5年生存率が8割から9割にもなるという。

 

そういった数字からは、がん治療の飛躍的な進歩が感じられる一方、相変わらず、がんは日本人の死因の第1位であり、がんによる死亡者数も、決して減ってはいないのである。

 

このギャップに対して、私はいつも何かモヤモヤとスッキリしないものを感じていた。

 

本当に、がんの早期発見・早期治療は有効だといえるのだろうか。

 

 

 実は、治ったといわれるがんの多くは、早期のがんである。

 

いまだに、転移したがんが病院で治せるわけではない。

 

例えば、1期の胃がんの5年生存率は9割を超えているが、4期の胃がんになると、5年生存率は1割にも満たないのだ。

 

では、転移のない早期のがんが治って、なぜ転移したがんは治らないのだろうか。

 

そんなことは当たり前だと思っているなら、それは思い込みである。

 

転移のある・なしに関わらず、全く同じがん細胞を治療するのだから、治る・治らないの間に、なぜここまで大きな違いが出るのか。

 

この疑問には、明確な解答が必要なはずだ。

 

答えようがないというのなら、がんの5年生存率の向上とは、治癒率が上がったのではなく、単に何らかの別の事情で、救命・延命率が上がっただけではないか、という疑いも生じてくる。

 

 

 そこでまず考えられるのが、がんの手術方法の改善だろう。

 

今は、早期の胃がんの手術は内視鏡で行われているが、以前は、早期の胃がんでも開腹手術をしていた。

 

しかも、患部周辺のリンパ節を広範囲に廓清する、拡大手術が一般的だったのだ。

 

拡大手術となると、患者にとっては格段に負担が大きい。

 

その手術のせいで、手術中に死亡する例も相当多かったのである。

 

当然ながら、これは胃がんに限った話ではない。

 

すると、5年生存率の向上といっても、それは術中死の回避を含めた救命技術の向上に過ぎず、がんそのものを治す技術が向上したわけではないと考えてもいいはずだ。

 

 

 さらに、数年前、米国の国立がん研究所が、驚くべき数字を発表していた。

 

早期発見を目標に、がん検診を普及してきたこの40年で、数百万人もの人が、がんでもないのにがんだと診断( overdiagnosis:過剰診断)され、そのまま、不要ながん治療( overtreatment:過剰治療)を受けていたというのだ。(※)

 

なかでも乳がんの過剰診断の数は、30年で130万人にも上るという。

 

そして、そのままがん治療を受けたことで、治療によって本物のがんが発症していることも指摘されている。

 

これらのデータが正しいかどうかは、今後もさらなる追跡調査が必要だろう。

 

だが、これらの数字が事実であるなら、米国以上にがん検診が盛んな日本では、過剰診断された患者の数も、より多く存在することが予想される。

 

 

 ではここで、日本の典型的な過剰診断の例をみてみよう。

 

昨年、知人の後期高齢者の女性が、ある有名病院での検査で、卵巣がんの疑いがあると診断された。

 

私には、がんがある体には思えなかったのだが、彼女は医者の勧めるまま、子宮と卵巣の摘出手術を受けてしまった。

 

ところが、切り取ってみたら、やはりがんではなかった。

 

医者からは、「がんでなくて良かったですね」といわれ、本人もそれを喜んでいた。

 

しかし、がんの疑いがあるだけで臓器を切り取り、その結果、「がんでなくて良かった」で済ませて平然としていられる医療とは、一体何なのだろうか。

 

がんの周囲には、こういう話が実に多いのである。

 

 

 また、同じ病態であっても、がんだと誤診されてしまう例もあるだろう。

 

いざ、がんだとなれば、手術だけではすまない。

 

放射線だ、抗がん剤だといった治療が続く。

 

このようなことが何百万件もあれば、当然、数字としてのがんの5年生存率は上がったように見える。

 

だからといって、本物のがんの死者数は減っていないのだから、これではがんが治るようになったとはいえない。

 

 

 私の実感としても、米国の国立がん研究所が発表した数字には、うなずけるものがある。

 

以前から、乳がんに関しては、特に誤診が多いような気がしていた。

 

というのも、私ががんの有無を判断する際に基準としている「アシンメトリ現象」と、がん周辺のリンパの硬い腫れという特徴が見られないのに、乳がんだと診断されている人が多すぎるのだ。

 

そのため、乳がんにだけは、私の判断基準が当てはまらないのだろうか、という印象を持っていた。

 

ところが、それらが全て医師の誤診、もしくは過剰診断だったというのなら、私としては十分に納得がいく。

 

 

 そもそも、早期発見を目指して検診を重ねてみても、現在の検査技術では、早期のがんは、確実には判定できないのである。

 

がんをがんだと確実に判定するには、転移を確認するしかない。

 

しかし、早期と言われる直径1センチのがんであっても、そこまで成長するのには10年以上もかかり、がん細胞の数も10億個にまで達している。

 

それほど長時間経過したがんが、果たして早期のがんだといえるのか。

 

また、それだけの時間が経過していながら、いまだに転移していないなどとは考えられないはずだ。

 

そんなのんびりとしたがんは、がんとは呼べないのではないか。

 

まだ転移していなかっただけだとしても、肉眼による手術で、10億個ものがん細胞を、1つ残らず取り去ることなどできない。

 

それが本物のがんだったならば、細胞が1個でも残っていたら、近い将来、必ず再発することになる。

 

だからこそ、続けざまに放射線と抗がん剤を施した上で、5年もの間、再発・転移の有無を調べ続けるのだろう。

 

だが、早期のがんを確実に判定する技術がない以上、治療によってがんが完治したかどうかも、確かめる技術は存在しないのである。

 

 

 がんの定義上、がんというのは転移するものなのである。

 

言い換えれば、転移を確認できないがんを、がんと認めるわけにはいかないのだ。

 

まして、転移してもいないがんを治したからといって、本物のがんを治したことにはならない。

 

がんを治したというのは、転移を確認できたがんを完治させて初めて口にできることなのである。

 

そこで現在、米国の医学界では、がん(cancer)という名称そのものの、再定義を求める動きがあるようだ。

 

要するに、がんとは呼べない状態をがんだと過剰診断し、誤った治療を施してきたことを認め、是正の方向に向かっているのだ。

 

 

 片や日本では、早期発見・早期治療が有効であるかのような認識が深く浸透しているせいで、進行したがんが見つかった場合、「もっと早く検査を受けていれば、対処の方法もあったのに」と医師から患者が責められることがある。

 

しかし、この言葉を聞くたび、私には落語の「手遅れ医者」の話に聞こえてしまう。

 

「手遅れ医者」とは、いつも「手遅れだ」といってごまかしていた医者が、しまいには屋根から落ちた人に向かって、「屋根から落ちる前に来なけりゃ手遅れだ」という話だ。

 

これが現代なら、「がんは、がんができる前に治療しなけりゃ手遅れだ」というオチになるのだろうか。

 

もちろん、これは皮肉のつもりだ。

 

だが、乳がんの予防目的で、乳房を切除して話題になった米国女優の例を見れば、これは皮肉にもならないかもしれない。

 

1日でも早く、1ミリでも小さいうちにがんの治療を始めたいと思えば、最終的には、がんができる前に治療開始が必要だ、という気持ちになるのだろう。

 

それでも私は、現在の方法では、本物のがんに対抗する手段としては、かなり方向が間違っていると思うのである。

 

                             (花山 水清)

 

 ※ "Millions Wrongly Treated for 'Cancer,'
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