■ボツ原稿

 

 先日、引き出しを片づけていたら、数年前にボツにした、メールマガジンの原稿が出てきた。

 

当誌は私の研究発表の場でもあるから、日頃から考えていることをまとめる機会でもある。

 

そのため、書き始めてみたら、まとまりのつかないものから、時期尚早のものまであって、発表できる内容になるまでには、何倍もの原稿を、ほごにしているのだ。

 

 

 今回見つけたボツ原稿は、「アシンメトリ現象」の解消につながる、究極の「リセットボタン」について書いたものだった。

 

「アシンメトリ現象」とは、規則性をもった、左右非対称な体の状態のことである。

 

脊椎(せきつい)動物にとって、体の形に非対称性が現れることは、生命体としては、致命的な形状であることを意味する。

 

そのことに気づいてしまった以上、何とかして「アシンメトリ現象」発生の根本原因を突き止め、その解消方法を探し出す必要があったのだ。

 

 

 ■究極の「リセットボタン」

 

 私は以前、この「アシンメトリ現象」を、腰痛などに代表される「骨のズレ」のグループと、がんなどに代表される「形態異常」の疾患グループとの、2つに分けて考えていた。

 

そして、それぞれに対する施術方法も、全く違うものだった。

 

施術時間にしても、片や「骨のズレ」の矯正が、ほんの数分で終わるのに対し、「形態異常」への施術となると、数時間に及ぶこともあった。

 

さらに、命に関わるほどの疾患となると、施術する側にもされる側にも、負担が大きかった。

 

そのため、施術方法もそこに費やす時間も、より簡略化される必要があったのだ。

 

そこで、長年、改良に改良を重ね、理論上も、「骨のズレ」と「形態異常」とが、「アシンメトリ現象」として一つにまとめられたことで、施術内容は飛躍的に向上した。

 

それが、現在の「モルフォセラピー」である。

 

しかし、さらにその効果を確実にしていけば、最終的には、それが究極の「リセットボタン」となるはずだ。

 

つまり、究極の「リセットボタン」とは、どこか1ケ所のズレさえ矯正すれば、「アシンメトリ現象」に関連する全ての疾患に対して、劇的な効果を現すことが、期待されるポイントのことなのである。

 

 

 ■26個の積み木

 

 では、実際のところ、人体にはどれだけの、「骨のズレ」が存在するのだろう。

 

人間の体の中心となる脊椎(せきつい)は、頚椎(けいつい)7個、胸椎12個、腰椎5個で構成されている。

 

さらに、上下に頭蓋(とうがい)と仙骨を加えて、合計26個の積み木を、縦に積み上げたものが、平均的な体の中心軸だと考えてみよう。

 

それら26個の積み木のそれぞれが、左右にズレる組み合わせは、何通りになるだろうか。

 

ただし、「アシンメトリ現象」の法則では、頭蓋は右のみ、第2頚椎は左のみ、第1胸椎から下の18個も左のみにしかズレないので、計算は少し複雑になる。

 

一応、私の計算では、159,252,504通りの、ズレの組み合わせが存在することになる。

 

当誌の読者には数学の先生もおられるので、間違っていたらご指摘くださるはずだが、いずれにしても、途方もない数であることは確かだ。

 

その膨大な数の、ズレの組み合わせに応じて、それに伴う症状も多岐にわたるのである。

 

 

 ■頭蓋のズレではなかった

 

 さて、そのうち1ケ所のみのズレの矯正で、全てが解決するとしたら、それが究極の「リセットボタン」となる。

 

1つだけとなると、その候補は32ケ所に絞られる。

 

そこで、以前考えた究極の「リセットボタン」は、頭蓋のズレであった。

 

その論拠は、頭蓋がズレると、脊髄(せきずい)及び、脊髄神経の中枢と末梢の、両方の神経に一度に影響を与えるからである。

 

さらに、頭蓋のズレは、位置的には唯一、延髄(えんずい)に対して作用を及ぼす。

 

延髄は、呼吸、循環、体温調節に関係する自律神経中枢や、嚥下(えんげ)、嘔吐(おうと)、咳などの反射中枢でもある。

 

また、脳神経12対のうち、第5から第12までの神経は、延髄から起こり、錐体路(すいたいろ)を通る。

 

錐体路は、随意運動の伝導路であり、ちょうど延髄のところで交叉(こうさ)している。

 

そのため、当初は、「アシンメトリ現象」の特徴である、左右差の規則性は、頭蓋のズレが原因ではないかと考えていたのである。

 

その他にも、頭蓋がズレると、大後頭孔(だいこうとうこう)のなかを通る前脊髄動脈、後脊髄動脈ならびに椎骨動脈などの、重要な動脈が圧迫される。

 

これらの動脈の圧迫が、脳卒中の原因となっていることも、十分に考えられる。

 

そして何よりも、頭蓋が右に倒れ込むことで、何らかの力学的作用が働いて、第2頚椎と第1胸椎から下が、左のみにズレるのではないかと考えたのだ。

 

ところが、その肝心の頭蓋のズレが、「アシンメトリ現象」をもつ人全てに当てはまるわけではないのである。

 

これは、論理としては致命的な欠陥なので、やむなく、頭蓋のズレは「リセットボタン」の候補から除外され、その原稿もお蔵入りとなったのだった。

 

 

 ■有力候補の発見

 

 では、究極の「リセットボタン」は、一体どこにあるのだろうか。

 

そもそも、そのようなスイッチが、存在するのかどうかすらわからないが、最近になって、ひょっとしたらと思える、有力な候補が見つかった。

 

それが、第5腰椎と仙骨のズレなのである。

 

一つに絞り込みたいところだが、第5腰椎と仙骨は、必ずセットでズレているので、矯正の対象としては、分けては扱えない。

 

また、私のいうズレとは、上に載ったほうの積み木が、左右にズレるという意味だが、この左右というのも、あくまでも平面的な表現に過ぎない。

 

実際の骨は立体構造であるから、ズレとは、骨同士が、重力に対してらせん階段状に、ねじれた位置関係にあることを意味している。

 

そして、仙骨のズレといえば、仙骨の上部が、左に傾いている状態のことである。

 

 

 ■ポイントは仙髄か

 

 実は、この仙骨の傾きは、仙髄に対して重大な作用を及ぼす。

 

つまり、仙髄の交感神経と副交感神経の、両神経の支配域に、同時に作用を及ぼすのである。

 

 

 通常、骨のズレを矯正できる範囲内で、交感神経と副交感神経の支配域が重なるのは、延髄か仙髄しかない。

 

すなわち、頭蓋か仙骨のズレである。

 

そのうち、「アシンメトリ現象」をもつ人全てに共通して見られるのは、第5腰椎と仙骨のズレだけである。

 

また、この部分がズレている人は、左腰部の筋肉が盛り上がっている。

 

この盛り上がりは、「アシンメトリ現象」では、極めてよく見られる特徴でもある。

 

そして、これらの全ての要素が、究極の「リセットボタン」を特定する上で、絶対不可欠な条件なのだ。

 

 

 さらに、私の経験でも、第5腰椎と仙骨のズレは、完全に矯正しきるのが難しい反面、矯正が成功すると、他の部位のズレがゆるんで戻しやすくなり、「アシンメトリ現象」そのものも、非常に解消しやすくなることがわかっている。

 

もしかしたら、自律神経の元となる視床下部まで、仙髄が支配しているのではないかと思えるほど、その矯正の効果は大きいのだ。

 

 

 ■「アシンメトリ現象」と錐体外路

 

 さて、当初、「リセットボタン」として想定した頭蓋のズレにおいては、ズレによる錐体路の障害で、「アシンメトリ現象」が起きることはなかった。

 

しかし、錐体路の補助的役割を果たしている伝導路には、錐体外路がある。

 

一般的にも、錐体外路が障害されると、筋の緊張や不随意運動が起こることが知られている。

 

そして、この錐体外路などの障害で代表的な筋緊張の病気に、パーキンソン病がある。

 

パーキンソン病患者にも「アシンメトリ現象」は見られるし、頭蓋のズレが錐体外路にもっとも近いことからも、イメージとしては、このズレがパーキンソン病の、筋の緊張や不随意運動に、いちばん影響していそうな気がした。

 

ところが実際には、頭蓋のズレを矯正してみても、全く効果がない。

 

そこで、試しに第5腰椎と仙骨のズレを、集中的に矯正してみると、一時的にではあっても、筋の緊張や不随意運動に、変化が見られたのである。

 

すると、「アシンメトリ現象」とは、錐体路ではなく、錐体外路の障害である可能性が出てくる。

 

ただ、それがどうして、仙髄と関連するのか。

 

私のなかでは、すでに理由づけはできているが、今の段階では、それを既存の医学常識に則って、説明することができないのだ。

 

そこに、もどかしさがある。

 

もちろん、今後もさらに検証を重ねていかねばならないが、もし、このなぞが完全に解明できれば、「アシンメトリ現象」に伴う、さまざまな疾患に対してのアプローチは、極端にショートカットできる。

 

まさに、夢のような施術が可能になるのだ。
                             (花山 水清)

 

 

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    ■記事提供/花山水清 ■編集・発行責任/有限会社花山水清
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