【ハナヤマ通信】340 三叉神経痛と口唇ヘルペス
だれもがその生涯で、大なり小なり何らかの体の痛みを経験する。
人によっては、想像を絶する痛みを体験していることだろう。
私にしても、過去にはさまざまな痛みに苦しんできた。
その結果、痛みにはその度合いだけでなく、数多くの種類があることも身を持って確認した。
私の経験上、痛みの度合いで上位にくるのは、三叉神経痛(さんさしんけいつう)だと思う。
三叉神経痛とは、顔面にある三叉神経という太い神経の先で起こる神経痛のことである。
三叉神経はその名の通り、耳の前当たりで、眼の上、上あご、下あごの3本に枝分かれしているので、耳、目、唇、鼻、頭皮、額、ほほ、歯、歯肉、あご、顔の側面などに症状が現れる。
医学的には、血管が三叉神経に当たるのが症状の原因だといわれているが、なぜそうなるのかは明確ではない。
そのため、確定的な治療法も、今のところ存在しない。
実は、単なる三叉神経の痛みなら、ほとんどの人が経験済みだ。
虫歯による歯の痛みや、かき氷を食べて、こめかみにキーンとくるのは、三叉神経の痛みなのである。
しかし、三叉神経痛となると、痛みはこの程度のものではない。
その症状のあまりの激しさゆえ、別名「自殺病」ともいわれるほどである。
私の場合も、周期的に訪れる激痛で、その都度、のたうち回っていたのだ。
そういえば、学生の頃に体験した痛みも、かなり激しいものだった。
あるとき、電車のなかで本を読んでいると、だんだん視界がぼやけてきた。
そのうち、目が痛み出し、次第に、吐き気をもよおすほどの激痛に変わった。
あまりの痛みのために身動き一つできず、声も出せないし、大きな呼吸もできない。
ただ目を固く閉じたまま、ひたすら耐えるしかなかったのだ。
激しい痛みなら、以前、友人の歯科医に頼んで、麻酔をかけずに歯を削ってもらったこともあるが、同じ三叉神経上の痛みであっても、歯の治療程度の痛みでは、このときの痛みとは全く比べ物にならなかった。
そんな激しい痛みであっても、しばらくすると、徐々に痛みが引いていき、後は何事もなかったかのように、元の状態に戻った。
今にして思えば、この症状も頭蓋や頚椎のズレによるものだったのだ。
実際のところ、三叉神経痛の患者さんは、意外に多い。
この間も、激しい三叉神経痛で苦しんでいる女性が来院された。
同じ経験をしてきた私には、説明を聞くまでもなく、彼女の症状は手に取るようにわかる。
ただ、私のときと違うのは、今の私には、頭蓋と頚椎のズレを戻せば、解決することがわかっている点である。
しかし、ズレによる三叉神経痛というのは、病院で検査してもなかなか明確に診断がつかない。
片頭痛だと思ってずっと病院通いをしている人もいたし、歯が悪くもないのに歯が痛い、歯茎が痛いと感じて、歯科に通院している人もいた。
結果的には、それらの症状は骨のズレが原因の痛みだったのだが、これが病院ではわからないのだから厄介だ。
また、三叉神経に関係する疾患には、口唇ヘルペスがある。
口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスによる感染症である。
風邪を引いた後などの体が弱ったときに出るので、「風邪の華」とか「熱の華」などと呼ばれる、ごく一般的な疾患だ。
口唇ヘルペスの発症は、年に1、2回が平均的だといわれているが、あるとき、以前から頻繁に口唇ヘルペスを発症しているという女性が来院された。
話を聞くと、彼女は毎月のように発症しているという。
口唇ヘルペスの症状そのものは、口の周りに水疱(すいほう)ができて、少し痛む程度である。
しかし、見た目がよろしくない。
人からよく見えるところなだけに、人目を気にする人にとっては深刻だ。
そんな彼女の口唇ヘルペスが、来院の度に頚椎のズレを正しい位置に戻すようにしているうちに、ほとんど出なくなった。
もちろん、口唇ヘルペスはウイルスが原因であることはまちがいない。
だが、ウイルス感染者が全員、必ず発症するわけでもないのである。
この、発症する・しないの違いは、頚椎のズレの有無にかかっていると私は考えている。
これは、拙著『からだの異常はなぜ左に現れるのか』のなかでも書いた、帯状疱疹(たいじょうほうしん)の発症メカニズムと同じであるから、興味のある方は参照されたい。
ポイントとしては、三叉神経痛や口唇ヘルペスのような、三叉神経にまつわる症状は、頭蓋や頚椎をいつも正しい位置に戻しておくことが重要である。
それらのズレの矯正自体は、いたって簡単な作業である。
ところが、矯正の方法は簡単であっても、頭蓋や頚椎の矯正は、へたをすると危険な面があることも否めない。
そのため、一般の方には、腰椎や胸椎の矯正ほど、安易におすすめできないのが悩ましいところである。
自分で自分のズレを矯正するならともかく、たとえ家族に対しての矯正であっても、時間をかけてじっくりと技術を習得したうえで、慎重に矯正に臨んでいただきたいと思う。
(花山水清)
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■記事提供/花山水清 ■編集・発行責任/スギタカズコ
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