【ハナヤマ通信】344 ポリファーマシーと医師の役割

医者にとって、もっともイヤな患者の話がある。

 

ある医者の奥さんが、ちょっとした症状をダンナ(医者)に伝えた。

 

すると、「これでも飲んでなさい」と薬を渡された。

 

奥さんは、数日はその薬を飲んでいたが、一向に症状が治まる気配がない。

 

そこで、「アナタッ、あの薬、ゼンゼン効かないじゃない!」とダンナに文句をいった。

 

ダンナは、「あ〜そうか。それならこっちの薬でも飲んでみるか」と軽くあしらった。

 

その態度に奥さんがぶち切れた。

 

「アンタッ!病院でも、そんないい加減に患者さんに薬を出してるのっ」とダンナを叱りつけたのだ。

 

どこへ行っても医者は偉いが、家庭で偉いのは奥さんだ。

 

医者であっても、家庭内の序列には逆らえないというわけだ。

 

 

 普通なら、病院で「薬が効かない」といって、医師を叱りつける勇気のある患者はいない。

 

それどころか、患者の多くは、医師がしっかり診断して処方しているのだから、その薬が効くのは当たり前だと思っている。

 

 

 しかし、医師というのは、直接生命に関わる症状でなければ、適当に薬を飲ませておけば、そのうち治まるだろうとタカをくくっている節がある。

 

絶対にこの薬が効果を発揮するはずだ、などと確信をもって処方している医師などいないのではないか。

 

にもかかわらず、患者が期待しているのは、時代劇に出てくる南蛮渡来の薬のような存在だ。

 

しかし、現実では、薬を飲んで、その場で症状がピタリと止まるなどという展開はめったにない。

 

効いたように思える薬でも、その効果のほとんどが、自然治癒によるものである。

 

なかには、その薬が自然治癒力のジャマをすることすらあるから、よほどのことがない限り、薬など飲まないほうがいい。

 

実際、来院患者や奥さんには気楽に出す薬を、愛する我が子に常用させている医師などいないはずだ。

 

だが、多くの患者の、薬に対する信頼となると、信仰に近いものがあって、私は理解に苦しむことも多いのである。

 

 

 私は常々、市販薬だけでなく、医師が処方する薬も、大方がムダな薬だと感じている。

 

先日、ある男性が陰部に痛みを感じて、泌尿器科を受診した。

 

医師はまず、前立腺がんを疑って、一通りの検査をした。

 

しかし、異常が見つからなかったので、とりあえず前立腺炎と診断を下し、抗生物質を処方した。

 

 

 ところが、その薬を飲み続けても、全く症状が治まらない。

 

そこで私が調べてみると、彼の陰部の痛みは、腰椎と骨盤のズレが原因だった。

 

私は今までにも、同様の症例はイヤというほど見てきた。

 

当誌でも何度も書いてきたので、おなじみの読者も多いだろう。

 

もちろん、そのズレを戻したら、医師の診断では感染症だったはずの症状が、即座に解消してしまった。

 

つまり、彼が飲み続けてきた薬は、全くのムダだったのである。

 

 

 日本に限ったことではないが、医療システムは、必要のあるなしにかかわらず、薬を使うことで成り立っている。

 

そのため、ことあるごとに薬で何とかしようと考える医師が、圧倒的多数派なのだ。

 

その結果、ポリファーマシー(多剤併用・医薬品の不適切な使用)による薬物有害反応が、数多く発生することになる。

 

特に高齢者の場合は、それが深刻な事態へと発展する頻度も高い。

 

 

 高齢者というのは、おしなべて処方されている薬の種類が多い。

 

その薬の副作用には、ふらつきや目まいを伴うものも多い。

 

そのふらつきが原因で、転倒して大腿部を骨折し、寝たきりになって、誤嚥性(ごえんせい)肺炎で死亡するというのが一つのパターンになっている。

 

統計でも、80代以上の高齢者は、転倒以降の死亡率がグンと高いのである。

 

 

 また、高齢者の場合、自分で薬の管理をすることにもムリがある。

 

ある80代の女性は、4科の医師から合計10種類の薬を処方されていた。

 

それらの薬のうち半分ほどに、ふらつき・目まいの副作用があり、注意書きには、車の運転や高所作業は避けるようにと書いてある。

 

本人も、日常的に「ふらつく、目まいがする」と訴える。

 

しかし、高齢者は、その薬を飲んだこと自体を忘れて、調子が悪いと感じると、同じ薬をたて続けに飲んでしまうことも度々ある。

 

高齢者でなくても、薬というのは、飲めば飲むほどいいものだと誤解している人は驚くほど多いのだ。

 

 

 こういった薬の副作用で、転倒を繰り返している例が多いことは、容易に想像がつく。

 

しかし、当の医師たちは、そのようなことには全く頓着しないで、薬を処方する。

 

しかも、ほとんどの医師は、高齢者の薬を増やすことはあっても、減らすことなどない。

 

まして、他科の専門医からの処方には、一切関知しないという、妙なセクト主義もはびこっているから恐ろしい。

 

 

 実は、今後急増するといわれている認知症も、その原因の一端を担っているのは、このポリファーマシーにあると私は考えている。

 

本来、薬の処方に、医師がほとんどの権限をもっているのは異常なことだ。

 

薬の専門家は、医師ではなく薬剤師のはずだ。

 

薬剤師から見れば、医師は薬に関して、特に薬の副作用に関して、勉強不足だと感じることが多いという。

 

このようないびつな医療システムが続くと、ポリファーマシーのような問題も、さらに深刻化するのは当然だろう。

 

 

だが、このシステムの土台を支えているのは、ひたすら薬を求め続ける患者自身の思いにある。

 

まともな医師が、「薬で治るわけではない」と必死に説得しても、「なんでもいいから薬を出せ」、と迫る患者は多い。

 

その姿を見るにつけ、実は今も昔も、医療に求められているのは病気治療そのものではなく、不安の解消ではないかと思えてくる。

 

その心理の深い部分をつかみきれなければ、ポリファーマシーの問題も解決できないだろう。

 

やはり現代においても、医師に求められている役割とは、メディスンマンではなく、あらゆる不安から開放してくれるシャーマンなのかもしれない。

 

 

                             (花山水清)

 

 

 

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【3】今 月 の 雑 感
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  ここのところ、北海道の知人から、カレイ各種に、行者ニンニク、フキ、
 笹ダケ、ワラビなど、初夏の味覚をいただく機会が増えました。笹ダケなど
 はクマと鉢合わせするような場所で採るので、山に入るときは格闘用のナイ
 フを持参するそうです。そう聞くとありがたさもひとしおです。(ハナヤマ)

 

 

  ★次回「ハナヤマ通信」は、7月1日(水)午前10時配信予定です★

 

 

 

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     ■記事提供/花山水清 ■編集・発行責任/有限会社花山水清
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